栃木県宇都宮市
中戸祭1丁目5−4

モノノメ#2

改めて問います。いまの報道は、批評は、おもしろいでしょうか? それは果たして、考える場として機能しているでしょうか?  僕にはそうは思えません。いま、情報ネットワークにあふれかえるほとんどの言葉は、ある問題があったときにその問題を解くための知恵を出すこともなければ、問題そのものの問い直すこともありません。ほとんどの言葉は既に「世間(僕が一番嫌いな言葉です)」で話題になっている問題に、どう答えるとある層を動員(課金)させることができるかという大喜利的なゲームのプレイになってしまっています。そして、そこには何も建設的なものは存在しません。

だから僕たちは2020年に「遅いインターネット」という運動をはじめました。これはプラットフォームの提供する「速度」に抗って、SNSの相互評価ゲームの外側で時にはゆっくり事物を考えることを提案する運動です。

そしてその延長に2021年の秋、僕たちは新しい雑誌「モノノメ」を創刊しました。コンセプトは「検索では届かない」。タイムラインの潮目を読むことに背を向けて、地に足のついた仕事をしている人だけに参加してもらう。失敗した人々に石を投げて読者を接待するような誌面や、既に支配的な話題を後追いして換金するような誌面にはしない。「遅いインターネット」計画から続く、アテンションエコノミーに抗いゆっくり思考する場をつくる。そのために、インターネットでの直接販売と、主旨を理解してくれる施設でのみ取り扱うことにして、初版5,000部をほんとうに届けたい人5,000人にしっかりと届ける。ただ売って終わりにせず、そのあとは読者と一緒に考え続ける……そんな雑誌を目指しました。

そして、このプロジェクトで大事なのは「続けること」です。新しい方法を試行錯誤しながら、こうやっていけばインディペンデントな、長いものに巻かれない「発信」を一定のクオリティを保ちながら続けていける……そんな成功例を小さくてもいいから、長く続くかたちで遺したい。僕はそう考えています。

¥3,080 (税込)

関連する本

モトムラタツヒコの読書の絵日記
世界は光であふれてルンです
旅のコマんド[アジア編]
田舎の未来 手探りの7年間とその先について
NEON NEON
カフェから時代は創られる
割りばしから車まで
コジコジにきいてみた。
まとまらない言葉を生きる
書を捨てよ、町へ出よう